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「未来のミライ」感想(ネタバレあり)

未来のミライ感想 Ver.1.0

前提:特にインタビューや解説などは読んでないので誤認などがある場合があります。また、まだ1回しか見てないのでかなりの緩さが予想されます。

 

*物語のテーマ

 家族とは樹であり家族の歴史とは枝であり葉である

 

 まず、この作品はすべてを説明してくれる。ここからここまでが1つの区切りです、ここまではこういうことを映像にしたので解説します、そして最後はこの物語のテーマはこういうことです、と事細かに明かしていく。しかし、そのテーマを映像で表現するときのルール的なものは特に明示されず、ただ中庭に出るというものだけである。この作品を最後まで楽しむためには、まずそれを受け入れる必要がある。そして、子供特有の泣きやいじわる、押しつけがましい家族観などイラっとする人には受け入れがたい作品だろうなと思った。

 

 1カット目は鳥瞰のカットから入って、これは割とあることなので疑問に思わなかったが、OPの後ももう1回このカットから入ったので「これは何かあるな」と思ったら案の定テーマにつながるものだった。

 

 

1.ミライちゃんとの邂逅・犬のゆっこ編

 まずこの物語に共通することだが、赤ちゃんミライちゃんは常に丁寧に描かれる。そのやわらかさ、動作、成長過程と絵だけで分かるようになっている。そして、くんちゃんはとにかく泣く。おそらく、子供が泣くということにストレスと感じる人はこの作品は結構つらかったのではないだろうか。

 このパートは家族が増えた時の気持ちの説明。何とも言えないもどかしさが、くんちゃんが産まれゆっこに構う時間が減ったという過去からミライちゃんが産まれて構う時間が減ったくんちゃんに諭す物語。

 ミライちゃんの名前は何がいい?とくんちゃんに聞いたところ、自分は「のぞみって答えるな」と思ったが案の定のぞみと答えた。その次につばめと答えたが(注:特急つばめは東海道新幹線ができる前に東海道本線の特急として運転していたのでつながりはある)、つばめは最後のテーマ解説シーンの鳥瞰時の案内の鳥になっていたので何らかの意味があるのかもしれない。

 

 

2.未来のミライちゃん編

 ミライちゃんが婚期が遅れるという理由でお雛様を片付けるためにくんちゃんに会いに来るお話。くんちゃん・ミライちゃん・ゆっこが同じ目標を達成することで家族のまとまりというものをくんちゃんに教えていく。

 気になったのが、くんちゃんはE233系とは認識しているのだけど、あずさはあずさとして認識している(つまりE353系とは認識してない)のは何か理由があるのだろうか。

 

 

3.お母さんの過去編

 くんちゃんのお母さんの子供時代にくんちゃんが会いに行く話。散らかすことをお母さんに咎められたくんちゃんだが、くんちゃんのお母さんも過去に散らかして怒られていた。ただし、ここの散らかしっぷりが尋常じゃないくらい大げさに描かれていたのがよく分からなかった。(作画はすごくよかった)

 母も今は立派に生きているが、過去は自分と同じように怒られてたし片付けられなかったということをくんちゃんに教えるパート。これもくんちゃんのお母さんと祖母が会話することですべて説明してくれる。

 

 

4.ひいお爺さん編

 自転車に乗れないくんちゃんが、ひいお爺さんのいた時代に行き馬やバイクを通して自転車の乗り方を教わり、父親の役割をくんちゃんに教える話。ひいお爺さんのキャラは登場人物の中でも異質なくらい特徴ある人物に描かれていて、これは過去と現在の家族とのつながりというテーマをより補完するためと思われる。

 

 

5.自分との向き合い編

 くんちゃんが家族に反抗しプチ家出のようなことをしたら、「ひとりぼっちの国」へ連れて行かれそうになる話。くんちゃんが好きな電車で東京駅へ行ったり、新幹線でつれていかれそうになったりとくんちゃん自身に焦点が当たってることが分かりやすく表現される。遺失物取扱所で「子供ばっかりだ」という台詞はやはり自分というものを認識していない存在ということだろう。

 最後にミライちゃんを家族として受け入れることで、翻って自分自身を見つめ直す構成になっている。最初はテーマはくんちゃんの自我の確立かと思ったが、おしめをしているような子供に持たせるようなテーマではないので自分というものを認識するくらいのテーマだと落ち着いた。

 

 

6.「家族とは何か」編(メインテーマ)

 作品全体の解説となる章。今までのことは全部家族というものの説明なんですよ、家族とは歴史なんですよ、家族とはつながりなんですよということを家族は樹のようなものですよという表現手法で伝えていく。家族の1場面1場面を葉に例えることで、各テーマをもう一度鳥瞰し、また母の過去編・ひいお爺さん編などの伏線を回収していくことでよりつながり・歴史を印象付けていく。

 そして、最後は自分との向き合い編で受け入れることが出来た赤ちゃんミライちゃんとのシーンで締めていく。

 

 

★映像について★

 自分はくんちゃんの1カット目を見た瞬間から、あんまり2D作画に依存しないで行くんだろうなと思った。あのカットは「ぬるぬる(死)」っぽく感じて、もっと「普通のアニメっぽさ」が欲しいと個人的には思ったけど、作中でも3DCGやレイアウトも3Dで切ってるんだろうなというカットが多用されていて、なにがなんでも手書き作画で見せてやろうという感じは全くしない作品だった。

 それでも、ゆっことのおいかけっこや自転車でのこけ方、馬作画など見どころは多数ある。

 

 

本渡ガタリズ(なぜ未来のミライ本渡楓アニメなのか)

 タイトルは未来のミライだが、実は未来のミライちゃんが活躍する場はほとんど無い。その代わり、すべてのテーマに関わってくるのが生まれたてのミライちゃんである。ミライちゃんとくんちゃんの出会い、愛情の受け止め、理不尽ないじめの対象化、くんちゃんの目覚め、ひいお爺さんのアルバムへミライちゃんを柔らかそうな手で触らせる、そしてラストのシーンなど物語に徹底して赤ちゃんミライちゃんを係わらせている。はっきり言って「未来のミライ」というタイトルにした理由はよく分からないが(現時点では「犬のゆっこ」でも成立しそうである)、現実のミライちゃんを物語のキーにしているのは確かである。

 そして随所で光る本渡さんの丁寧な演技である。ミライちゃん登場の1カット目の吐息から感動してしまった。言うまでもなく、物語のラストのバナナ・叫び・笑顔のシーンの演技も圧倒的に素晴らしかった。確かに、登場時間がトータルで長かったのはくんちゃんだし、物語を前に進める力を持っていたのもくんちゃんだが、自分は赤ちゃんミライちゃん主人公説を強く推していきたい。

 

 

まとめ的なもの

 いろいろ書いてみたが、未来のミライが面白いのか面白くないのかといわれたら、私は「面白い」と答える。この作品のテーマってすべて自分たちも経験してきたようなことなので、とにかく受け入れやすく「あー、あるある」とすっと心に入ってくる。また、ミニエピソード的な笑いも随所に散りばめられていて、何回もクスッとした。

 が、それはあくまで自分たちが「経験してきた」ということが前提になってくる。では、まだそれを経験していない子供が見てこれを面白いのかと思うのかははなはだ疑問が残る。(実際前述のミニエピソードで笑っていたのはおばさんだけだった)子供は駄々をこねてるだけのよく分からない話だと思うかもしてないし、テーマにも気づかないかもしれない。

 よって、夏休みに家族で見に行く作品としてはおススメはしにくいというのが結論である。別にエンタメに寄ってるわけでもない、恋愛要素もかけっこだけ、戦争シーンもドンパチが目立つわけでもないという作品をどう推していいのか宣伝マンも頭を悩ませているだろう。

 

 

 

メモ

未来飛行ギャグ

5章のモブの顔が適当になるのは何となくわかるけど、鬼ばばはなぜ。

物語は可能な限り固有名詞が排除される。が、地名は東京・横浜・磯子・京都などしっかりと描かれる。電車も何線か、何系かなどしっかりと描く。くんちゃんの興味の射程を示している?あとアップルのロゴはガッツリそのままだった。

涙・色使い(画面全体や身体が赤くなるなど)から感情はしっかり描いていこうということが感じられた。